軌道エレベーター、アンブロークンアロー、花模様が怖い、ほか

軌道エレベーター 宇宙へ架ける橋
石原藤夫 金子隆一 




宇宙に続くエレベーターのお話なんですよ。



じゃ、行ってくるよっていって、エレベーターに乗って、1Gぐらいでぐーっと上にあがっていくと1時間で宇宙ステーション到着しちゃうっていう。



燃焼を山ほど使い、さらに本体も使い捨てなロケットは、これさえあれば不要!


交通手段としてのイメージは上下に走る新幹線みたい。



それが実現可能かもしれないという検証と現在の状況がわかりやすく記述されています。




結論としては、アイディア次第では割と近々にいけるかも、というところらしいです。





軌道エレベーター。響きがかっこいいじゃありませんか?




この本の中にも紹介されていた軌道エレベータのアイディアを盛り込んだ「楽園の泉」アーサー・C・クラーク。読みたくなります。




そして

シリコンバレーの天才たち―明日を創る「人」と「場所」 (知恵の森文庫) (文庫)
堤 大介 (著)




シリコンバレーというITビジネス最前線における、そこに突出したエポックメイキングな人々とそのエピソードを紹介する本です。


アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風

アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風



アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風







読んじゃいました〜〜。読んでしまいましたよ〜〜〜。

雪風の三作目!




あいかわらずの雪風でした。



今回、これでもかこれでもかってくらい「人間」を取り巻く、人間の認識する世界を分解し、分解し、分解し尽くします。





それはまるで、世界という精巧な機械を、ねじや歯車の一つまで分解して、その構造を探ろうという試みのようです。




たとえば。

意識というのは何か?

わたしとは?

人間とは? 存在とは?

そんな風に分解して、再構築していきます。





「意識というのは<言葉>そのものでしょう」といま思いついたことが口をついて出た。「自分とは何者かと考える言葉なしでは、<自意識>すなわち<自分>を意識することは不可能だ」
  
                 (雪風が飛ぶ空)


「おまえのいうところの、わたしとは、なんだ。おまえは、おまえ自身を、なんだと思っているんだ?」
<わたしは、わたし、である>

               (アンブロークンアロー)




「たとえば飲もうという意識を向けられたコップに入った水は、通常は現実かつリアルだが、ときにホログラムのようなよくできた立体映像だったりすると、現実とリアルは一致しない。すなわち、飲めない。飲もうという意識を持たずにただ見ているだけならば、その水は現実ではなく、本物の水であろうとホログラムだろうと、ただリアルなだけだ」


               (アンブロークンアロー)




 神林作品は毎回これが快感なわけですが、今回も、大満足です。

 さらに!

 戦闘知性体雪風は、もぉほんっとうにイイコに育って、雪風のパートナーである深井大尉でなくても愛情を感じてしまいます。

 この場合のイイコというのは、よい子、という意味ではなく。

 己を知り、他者を認め、自分の存在を維持するために何が必要行動であるか探れて、行動を起こせるということで・・・。



 そう、子どもの成長そのものなんです。ああ、雪風すっかり大きくなって



 作中に、世界に意味を見出すことのない機械知性体ジャムが世界に意味を持たせるために地球侵略したのでは、という仮説が出てきます。


それはジャム側からの視点ですが、人間側からしたら。。。


 自己を確認するための手段が他者なのだとしたら、<人間>が<人間>であることを確認するための手段としてジャムがあるのかも?


 


 とさまざまなイメージを刺激してくれるのがまさに!神林作品であり、励起された妄想はとどまるところを知りませんっ!
(妄想暴走中)


 …こんな状態で夕食の支度ができるのかしらん?





 物語はまだまだ続きそうな気配。

 雪風のさらなる成長と、ジャムとの戦いの行方を期待します。



そしてカプチーノシリーズとでも言うのでしょうか?


名探偵のコーヒーのいれ方 コクと深みの名推理1 (ランダムハウス講談社文庫)

名探偵のコーヒーのいれ方 コクと深みの名推理1 (ランダムハウス講談社文庫)



名探偵のコーヒーの入れ方 クレオ・コイル 小川敏子







事件の後はカプチーノ [コクと深みの名推理2] (ランダムハウス講談社文庫) クレオ・コイル



ニューヨーク在住の登場人物たちが生き生きと描かれ、コーヒーがすごくおいしそうに書かれているので、それだけで満足といいたくなりますが、ミステリーも謎解きもGOOD

今回は30代バツイチ女性クレオ(主人公)にすっかり感情移入してしまい、

「ああ、その男性の誘いに乗ってはだめぇ〜〜」とかなりヤキモキしました。

コーヒーはマイルドなアメリカンに限る(味は問わない)な、こだわりのバリスタ(イタリアでエスプレッソを入れる専門職)クレオに嫌われそうなわたしですが、クレオの入れるコーヒーだけは飲んでみたくなります。



花模様が怖い



片岡義男はすごいんです!


角川映画(あんど角川書店)全盛期、ものすごい勢いで文庫本が100冊ぐらいでていて、

(子どもが言う「僕のパパは100回腕立てできるんだよ」のような、「すごくたくさん」というニュアンスの100ではなく、本当に100冊です)



そのどれもが一定のクオリティ。


そしてかなり、切れ味のするどい短編がざくざく。


白い町で、白に取り囲まれた苛立ちに追い詰められた男が、白いバスから降りた白いドレスに身を包んだ自分の女を、銃弾で鮮血に染めてしまう話。(白い町)




荒野を淡々と旅する男女が、まるで誕生日に約束した花束を渡すかのような雰囲気で、彼女を撃ち抜く拳銃の話をし、墓となるべき穴をほり、そして。。。(約束)



長編では「波乗りの島」! サーフィンをしたこともないのに、読んでいると足もとから波の圧力を感じ、チューブ(波がトンネル状になったところ)をすべりぬける錯覚を感じたほどです。




「アップルサイダーと彼女」では、ノートに緑色のポールペンで書くシーンにしびれ(当然まねをした)たりとか。



温帯の湿気の多い日本的な感性ではなく、湿気が少ない陽光にくっきりと世界が縁取られたアメリカ西海岸的な感性で、シャッターを切るがごとくに情景を描き出すのは、日本においてこの作家しかいません。




なのに、角川映画で「スローなブギにしてくれ」など映画化され、文庫もガンガンでたのちは、ブームが去ったがごとくの扱いでした。



そんなわけで、この作家はブームで語られていい作家ではなく、ちゃんと取り上げられ残されていくべき作家だなぁ、ひとりいきまいてました。

でも、というか、やっぱり、ちゃーんと皆わかってたんですね。




早川書房から「片岡義男コレクション」がでました!


上述した短編2作、「白い町」と「約束」はコレクション1「花模様が怖い」に入っています。

この2作、すごーーーーく好きで、神田の古書店で、探したりもしましたが、結局まだ入手していなかったんです。


読めてうれしかったです




少女には向かない職業 (創元推理文庫)

少女には向かない職業 (創元推理文庫)


少女には向かない職業
桜庭一樹 

代読を友人に頼まれた本ですが、これがまた、よい話でした。


13歳の少女たちの、非力感、焦燥感がリアルに描かれ、状況に追い詰められていく様を、ぐいっと読まされてしまいました。


わたしも13歳のころ少女でした(!?)

友だちとの付き合い方に試行錯誤し、時に傷つき、親や大人の押し付けてくる圧力から逃れる方法をしらず、ただ追いこめられて苦しい日々がありました。

きっと思い出せばだれもがそうだったと思います。

でも、忘れて大人になりきってしまう。

そんな日々を、この作家は克明に覚えていて描きだしています。


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母親が再婚してできた義父は、けがをしてから飲んだくれになり、義理の娘の財布から小金をくすねるような、ロクデナシ。

わめきちらすだけの存在を疎ましく感じていたとこころに、未必の故意、ちょっとした悪意の仕掛けをして気晴らしをすれば、という友人の提案がある。

もし、心臓の弱い義父が、心臓の薬をみつけられなかったら?

そう考えるだけでストレス解消できるじゃない。

それくらいの気持ちでしかけたことがきっかけとなり、少女たちはさらなる深みに追い詰められてゆく。


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買って読んでも○な出来です。切なすぎます。





そうそう、以前読んだ「黄色い目の魚」人気みたいです。
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