春信の春 江戸の春

春信の春、江戸の春 (文春新書)

春信の春、江戸の春 (文春新書)

読みました。鈴木春信好きです。

鈴木春信は、江戸時代明和期の町絵師です。

当時、連と呼ばれる大名を中心として俳諧の集まりがあり、そこで配られる絵暦の制作に起用された春信は、時代の寵児ともいえる人気を博しました。

後ろ盾になったのは、大名、大久保忠舒(雅号・巨川)。ブレーンとして平賀源内がついたと目されています。

印刷の世界に見当(今で言うトンボ)を初めて使用。せいぜいが3色までしか使えなかった時代に、多色摺りを持ち込んだだけでなく、絵の題材としても当時斬新だった町人文化に焦点を当て、生き生きとした情景描写を行いました。

彼の活躍は後進の絵師たちに多大な影響を与え、日本で最初の洋画家としてよく扱われる司馬江漢も、鈴木春信二世を名乗っていたとか、贋作を書いたとか、言われています。

また喜多川歌麿は彼の絵に多大な影響を受けていて、春信に献呈されているようなモチーフの作品もあり。

と、いうところはよく一般的な浮世絵の本に説明してあるのですが、この本は、そちらより春画的な部分に焦点をあて(「江戸の春」という題名はそこにもひっかけてある)ています。

春信の絵画の春画的な部分は、たぶん書き手も気恥ずかしいのか、きちんとした形の本を見たことがなく、そういうイミでも斬新な本でしたが、そこを掘り下げることによって、いままで触れることができなかった春信の精神性や、意図があかされて、非常の面白い一冊でした。