ロング・グッドバイ

読み終えました。

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しょっぱなからミステリアスに幕開けします。チャンドラー、なるほど名作といわれるだけあり、つかみはOK。



最初に主人公マーロウの目の前でアル中夫がキャデラックに乗る美人妻に捨てられ、つい「拾って」帰るところから、世界に一気にひきずりこまれ、ハイペースで進みました。



でも、なにしろ分厚い本で、読了まで10日以上かかってしまいました。




ミステリーがミステリーを呼ぶ展開なのに、ミステリーという肩書きが前面に立っていないのは、全体に漂うギムレットのごとき、ほろ苦い孤独の香り所以でしょうか。



愛と孤独、美学(生き方)と現実、虚飾に不安。




アメリカという国の繁栄の中でゆらめき、実相を失いかけてはすがりつく人々の姿が描かれています。



恥ずかしながら、村上版で初めて読んだのでよくあるように、清水訳とは比較できませんが。。。




村上春樹の翻訳もきれいに決まっていて、翻訳を意識しないで読めました。もともとが春樹さん、翻訳調ですものね。



全体に、引用したくなるような名文があり、繰り返し読みたくなります。


ところで、その有名(らしい)な文体は、後の作家に影響を与えすぎたようで、発表50年を経た今では、懐かしい感を与えます。

まるでガラス細工に、遥かなる異国の市場の喧噪を垣間見るような。