火星縦断 青いバラ

火星縦断 (ハヤカワ文庫SF)

火星縦断 (ハヤカワ文庫SF)

ローカス賞受賞だからというより、「火星」とタイトルにつくと、つい手にしてしまうのは性(さが)でしょう。

「レッドマーズ」「グリーンマーズ」も積読になっているのに、また買っちゃいました。

これは手にするなり一気読みです。



NASAの科学者が書いただけあって、なにより描写が緻密でリアルです。

「ドラゴンフライ―ミール宇宙ステーション・悪夢の真実〈上・下)」を読んでいるがごとくの臨場感に加え、


ドラゴンフライ―ミール宇宙ステーション・悪夢の真実〈上〉


アポロ13の帰還の時の乗組員たちのサバイバルを思わせる展開は、SFというより、近未来でもなく、「明日におこるかもしれない物語」を感じさせます。


第三次火星有人探査のお話ですが、作中では1次、2次とも失敗に終わった上での第三次有人探査。無事に火星の大地に降り立ったものの、帰還用に用意された機体がふっとんでしまうという、最悪の事態に。



SFで火星だからといって、超技術も、超能力も、超人も、異星人も出てきません。登場人物たちはすべて、今、この地球上にいるような人物ばかり。そこで生き残るためには・・・。


・・・こーゆーの好きなんですよぉ♪ 


谷甲州「惑星 CB-8 越冬隊」とか、航空軌道傭兵シリーズ的な、ハードメカ好きにはたまらない描写もありつつ、人間ドラマも抜群。


お勧めの逸品。



そして、いきおいづいて、また読んでいなかったこちらも購入。読んじゃいました。

プラネテス(4) (モーニング KC)

プラネテス(4) (モーニング KC)


これもまた、近未来SFで、明日の、そのまた先にありそうなお話でいいですねぇ。アニメ化されているのも知っているけど、こちらも未着手。まだまだたのしめそう。いったん連載終了、ってことですけど、もう少し先が見たい気がします。




さて、話題作だったのを、今さらながら読みました、これ↓

青いバラ (新潮文庫)

青いバラ (新潮文庫)

サントリーが去年青いバラ作出で賞をとって、それがサイトにあがっていましたが、見ればまだまだ紫色。



青発色のメカニズムは、青い遺伝子を組み換えて導入すればいい、という単純なものではないらしく、まだまだ道のりは長そうです。



さて、この作品、そうした過渡期のサントリー研究員にも取材もし、青いバラを求める人々のドラマや歴史をさらいつつ、日本で「ミスター・ローズ」と呼ばれたバラ作出家に焦点をあてたノンフィクション。



青いバラが存在しないから、自らの手でつくりだしてみたい、というのはわかりやすい欲望です。



バラ作出家たちは、さまざまなバラを掛け合わせ、あるいは突然変異を育て、青いバラをつくりだそうとしてきました。けれど、薄紫であったり、グレーであったりが、交配などによる作出の限界のよう。



一方、最新の遺伝技術を駆使した科学者たちのアプローチは、「青いバラをつくりだしたい」という欲望からではなく、「青いバラをつくりだしたら、わかりやすい技術提示になる」というところからスタートしていました。



それがいいことなのか、わるいことなのかはわかりません。



バラを愛したミスター・ローズもまた、かつては青いバラ作出を狙っていたといいます。けれど、晩年、といって差し支えない日々を送るなか、取材する著者にたずねます。



青いバラができたとして、あなたはそれを美しいと思いますか?」



ああ、なるほど。 そうかもしれない。


悔し紛れでもなんでもなく、青いバラが美しいと思えなければ、バラを愛し、生み出す作出家たちは、そこへ到達できないのかもしれない。


そう思わせるほどの愛情と丹精をこめ、何万もの苗から美にいたる1株を見出し、さらにかいまみえた美をかけあわせ、凝縮させ固着させて品種をつくりあげる人々と描きだす一冊。




読んでいて、「青」という谷川俊太郎の詩を思い出しました。



どんなに深く憧れ、どんなに強く求めても青を手にすることはできない。(中略)青は遠い色。


ついでながら。

この本にはカラーどころか白黒の写真ひとつなく、多種多様なバラの名前がでても、それをイメージするよすがもなく、先月手に入れたバラ大図鑑が大活躍♪ ちょっとうれしかったです。