ナイト・ガーデニング

ナイト・ガーデニング

ナイト・ガーデニング

「ナイト・ガーデニング」直訳すれば、夜の作庭。



昼間と違って、夜の闇、月の影の下、ひそやかに香りを放ち、音なき音をさせて芽を、葉をのばす植物たちの苑に、ひそかに淫靡なものを感じるのはわたしだけ? 



ナイト・ガーデニングとは、そこへ、ガーデニング(作庭)という意志を持って入り込む行為。



どんなだろう、と興味を書きたてられませんか?



というわけで、
「ナイト・ガーデニング」 E・L・スワン、タイトルに惹かれてを読みました。



ビンゴ!ってくらい、上記のイメージが合いました。



主人公は、脳梗塞で倒れてリハビリ中の、61歳の女性。魅力的な人物ではあるのですが、主人公としては、なかなか異色です。


隣の庭を造りにきた庭師(63歳)との出会いから、廃庭の再生、自身のリハビリとからみながら、新たに芽吹くのはまぎれもなく恋。



月闇の下、甦りかける美しい庭園の秘密めいた空間で、互いの身体を求めあう描写がなんともダイレクトですが、なにしろ61歳と63歳です。


きゃー!エッチィ(*>_<*);っていうものではありません。



展開がちょおっとハーレクイン?って気もしないでもありませんが、結末はさほど浮いていませんし。



それより、合間合間に語られる、庭の哲学や植物の知識の深さは、一朝一夕といったものではなく、実体験をともなってとしか思えない見事なものです。


また、ジュリー・モア・メッサヴィ「夢見る庭」やら福田和彦「日本の作庭ーいかにつくり、いかに楽しむか」などなど、作庭に関する引用を効果的に使っているのですが、これがまた日本庭園についてのものであるのが多く、日本の庭の奥深さを、まざまざと。日本人だし日本庭園は好きだけど、こんなに深いものとは(号泣)、とひざまづいてしまいそうです。


最初、度肝を抜かれるのは、小説のイントロである西行法師の一節です。



これ↓

うつつをばうつつとさらに思はねば
夢をば夢と何か思はむ

IF CANNOT ACCEPT THE REAL AS REAL
THEN HOW DO I ACCEPT
A DREAM AS A DREAM?

和文より、英文のほうが、意味がわかる!と思っちゃったのは、ちょっとなさけなかったですが。



庭のセンスもよく、知識も深く、庭好きなら読んでマル。