しゃべれどもしゃべれども、幻獣ムベンベを追え!ほか

更新頻度があくにも限度があります。って自分のことです。ごめん、誰もまってやしないと思うけど、ご無沙汰♪はてな


たまりにたまりまくったレビュー、去年の9月分まで一気にのせます。

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

佐藤多佳子しゃべれどもしゃべれども」読了!

「こーゆーの読みたいから本読んでるのよねぇ」と満足の吐息。

事件らしい事件はなぁんにもおきません。

二つ目の噺家に、どもりのテニスコーチと、対人関係が苦手な若い女性と、いじめにあっている(本人申告は9人ぐらいと喧嘩をしている)小学生、それにしゃべりの下手な野球解説者が、落語をならうだけの話です。

それだけなんだけど、それぞれは人生がかかっているから真剣で、それぞれの悩みが(描写がうまくて)他人事には感じられないから、ドキドキしながら行く末を案じつつ読んでしまいます。

すばらしい!

佐藤多佳子のほか作品をもっと読んでみようかな。


幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)

幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)

アフリカ、コンゴのテレ湖にいる(かもしれない)という幻の動物を追って、早稲田大学探検部がテレ湖調査に挑むノンフィクション。

TVでオンエアもされたことがあって、それをかすかに覚えていたので手に取りました。

そもそもテレ湖は、世界はともかく日本からは、だーれも行ったことのない秘境。

大臣の承認から、現地で使う言葉や装備、用意することは山とあって、それだけで前半戦終了。

後半戦は40日にわたるテレ湖調査についてで、これもまたマラリアに悩まされ、現地の伝統やら文化やらとの衝突があり、まぁ大変だなぁ、よく生きて帰れたなぁと思いつつ読了。

と、巻末にさらに当時の隊員たちの一文がついていてこちらにガンとやられました。

現地調査中、マラリアに罹り40℃の高熱で寝込んでいて、帰ってこられたのが不思議なくらいの隊員のものですが。。。

「そして自分にとって絶対的なものは何かを模索する。まず、この状況において誰が助けてくれるのか。それは両親である。両親なら全財産をなげうってでも自分を助けようとしてくれたことだろう。では、逆に自分が全てを投げ打って庇おうとするのは何か。答えは自明のものだった。(中略)

『絶対的なものがあるとすれば、それは仕事や夢といったものではなく、人間関係にあり、そのコアにあるのが家族なのだ(後略)』

命がけだったんですねぇ。しみじみ。

結局、テレ湖には「何か」がいるのかどうか未だ不明なのですが。

大正9年、英国領シンガポールを舞台に、華僑有力者の娘が殺され、容疑をかけられた主人公の逃亡劇と過去とを辿りながら、謎が明かされていきます。

時代の空気が押し寄せてくる描写力が、物語に厚みを持たせて、ぐいぐいひっぱります。

読んでいて、当時の日本と主人公の立ち位置にハラハラしてしまい、何とかならないものか、とじれてしまいました。

小説にせよ、時代にせよ、どうにもならないことなんですけどね(苦笑)、面白い小説には、つい引き込まれて、わが身のように感じてしまいます。


「笑えるクラッシック―不真面目な名曲案内」樋口 裕一【著】
読了。

84回だか演奏を繰り返すという「いやがらせ」という曲が紹介してあったり、ボレロが実はびっくり冗談音楽だった!なんていう話が満載。


ボナンザvs勝負脳 最強将棋ソフトは人間を超えるか
保木邦仁 渡辺明

読了。

表題本、将棋はほとんど知らないのですが、それでも面白く読めました。

コンピュータが将棋で人間を超える日が来るのでしょうか。人間にかなりせまったような印象を受ける読後でした。

将棋はやらないのですが、囲碁は超ヘタですが打っていたことがあり、この本を読んだら、勝負魂刺激されて、うずうず。

定石もすっかり忘れちゃったけど、「ヒカルの碁」に出てきた棋譜ヒカルの碁キャラクターズガイド)が手元にあるので、それでもみようかしらん。

人間はどこまで動物か (新潮文庫)

人間はどこまで動物か (新潮文庫)

読了。


ツレがうつになりまして。

ツレがうつになりまして。

地下鉄に乗って (講談社文庫)

地下鉄に乗って (講談社文庫)

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)

オー・マイ・ガアッ! (集英社文庫)

オー・マイ・ガアッ! (集英社文庫)




春の数えかた (新潮文庫)

春の数えかた (新潮文庫)

タイトルで、くらっとしてamazon.co.jpでクリックして購入した本。

動物行動学者の著者のエッセイ集で、視点の繊細さ、洞察の深さでぐいぐいと読ませます。

「なぜ同じ種類の花は、同じぐらいの高さに咲くのだろう?」「いつチョウは、サナギのなかで成虫に変化するのだろう?」

なぜ、に焦点が当てられたとたん、次々とひろがる「世界」は、ふだん見ている世界とはまったく違った景色になっていくから不思議です。


いつまでもデブと思うなよ (新潮新書)

いつまでもデブと思うなよ (新潮新書)


「いつまでもデブと思うなよ」岡田斗司夫 読了。

一年で50kgやせた著者のダイエットの記録です。

自分の食べた物を記録し、自分が食べているモノ(カロリーとかバランス、そして量)を認識するところからはじめるダイエットで、苦しかったり、辛かったりする空気がないのが、楽そうなダイエット方法です。

そこはまぁ、なにしろ岡田斗司夫さんなので、分析と洞察の細かさは、読み物としても面白く、社会的なデブのポジション(キャラづけ)や、現在の社会的なラベリングなど、ほぉほぉとうなづきながら、読みとおしてしまいます。

著者の写真の1年前と現在を比べると、別人みたいです。


対訳 ブレイク詩集―イギリス詩人選〈4〉 (岩波文庫)

対訳 ブレイク詩集―イギリス詩人選〈4〉 (岩波文庫)


うっわぁ! そうだったのねーと思わず言ってしまいました。

ブレイク詩集読んでいて。

非常にマイナーな話題で恐縮ですが、「虎よ虎よ」って原詩があったんですね。

虎よ、虎よ、輝き燃える
夜の森のなかで、・・・(以下略)

(ブレイク詩集 松島正一編 岩波文庫 収録の「虎」)

「虎よ虎よ」といえばアルフレッド・ベスターと思っていたわたし。読んだのも高校生ぐらいの時。きっと出典も書かれていただろうに、そんなことすっかり抜けてました。

だぁって、「虎よ虎よ」といえば、アルフレッド・ベスター(くどいっ!)・・・。

今あわててWikipediaみたところによると、ベスターの「虎よ虎よ」は、仮面ライダーにも影響を与えたりしたすごい作品とかなんとか。

ホント、そうだったようです。わたしが読んだときにはもう、「SF読むならコレ」みたいな特集には必ず入っていました。
・・・わたしが、それで読んだクチですから、間違いありません。

SF的なアイディアが豊富で衝撃的で、ひたすらかっこよかったのだけ、覚えています。

ってわけで、ようやくその名作「虎よ虎よ」のタイトルの由来を知って、身もだえしたという訳。

たぶん、ふつうならブレイクの詩を知っていて、ベスターの方に「そうだったのね」というべきなんでしょう。

蛇足ながら、最近ゴンゾがアニメ化しようとしたんですね。

さておき。

なつかしのSFつながりってわけじゃなく、本当に偶然なんですが、カレル・チャペック「ロボット」読了。


ロボット (岩波文庫)

ロボット (岩波文庫)

こちらは「ロボット」という言葉の語源となった作品(戯曲)です。

いまさらながら読みました。

えっと何年前かしら、1920年に書かれた作品なので、87年前のものですが、今読んでも遜色ないSF作品で、文学作品です。鳥肌立ちそうなくらい。

人間は、自らを労働から解放するために、能力的に人間より優れたロボット(人工人間)を作り出した。労働のためロボットは、感情も生殖機能も、味覚や痛覚ですら、労働に必要なもの以外は何も与えられなかった。

そして、ロボットは必然のように労働者から兵士へと転用される。

一方、同じ姿を持ちつつも分かり合えぬことを恐れた女は、分かり合うためにロボットに感情を与え・・・、感情を与えられたロボットは人間を憎むようになり、やがて暴動を起こし、人間を滅ぼしてしまう。

というような内容で、戯曲だし、飛ばせば30分ぐらいで読み終えますが、それでも、「膚の下」神林長平とかアトム(最終話のさらに後日談)読んだぐらいの衝撃がありました。


さらに言うなら、そうした作品の原点であり、未だ輝いているそら恐ろしい作品です。

描きだされる人間の「業」の深さが恐ろしい・・・。
予見されているのに、その道をたどっているような気がするのが、また恐ろしい。

カレル・チャペック。恐るべき天才だということがよーっくわかりました。

次は「山椒魚戦争」読んでみようかしらん。